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コラム

半育休の給与計算|手取りはいくらになる?社会保険料の免除も解説

2025.11.19

半育休とは、育児休業中に一時的・臨時的に働く制度です。
育休中の収入減少を補えるメリットがありますが、働き方によっては育児休業給付金が減額されるため、給与計算の仕組みを理解しておくことが重要です。

この記事では、半育休を利用した場合の給与と給付金の計算方法、そして手取り額がいくらになるのかを解説します。
また、家計に影響の大きい社会保険料の免除条件についても詳しく説明します。

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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そもそも「半育休」とは?育児休業中に一時的に働く制度

「半育休」とは、育児・介護休業法で認められている、育児休業期間中に一時的・臨時的に就労する働き方を指す通称です。
完全に休業するのではなく、会社の合意のもとで短時間・短期間の業務をこなし、給与を得ながら育児休業を継続する制度です。

近年では男性の育児休業取得を促進する「産後パパ育休(出生時育児休業)」も注目されています。
この制度では、子の出生後8週間以内に最大4週間の休みを取得でき、労使協定を締結していれば、休業中に就労することも認められています。

通常の育児休業と半育休の基本的な違い

通常の育児休業と半育休の最も大きな違いは、休業期間中に就労するかどうかという点です。
通常の育児休業は、育児に専念するために業務から完全に離れることを前提としており、収入源は主に雇用保険から支給される育児休業給付金のみとなります。

一方、半育休は、育児休業という身分を維持しながらも、会社と合意した上で一時的に業務を行います。
これにより、育児休業給付金に加えて会社から支払われる給与も収入として得られる点が異なります。
ただし、得られる給与額や働く日数・時間によっては給付金額が調整されるため、収入の仕組みを正しく理解しておく必要があります。

社労士 小栗の
アドバイス

就業規則の確認を忘れずに 「半育休」は通称であり、法律に明文化された制度名ではありません。会社がこの働き方を認めるかどうかは、就業規則の規定や労使協定の有無に大きく依存します。トラブルを避けるためにも、制度利用前に自社の就業規則で「育児休業中の就労」に関する規定を必ず確認し、人事労務担当者と書面で合意しておくことが重要です。特に産後パパ育休中の就労は労使協定が必要です。

半育休中の収入はいくら?給与と給付金の計算方法を解説

半育休中の総収入は、会社から支払われる給与と雇用保険から支給される育児休業給付金という2つの要素で構成されます。
手取り額を正確に把握するためには、それぞれの計算方法を理解し、両者の合計額から税金や社会保険料がどのように引かれるかを知る必要があります。

特に育児休業給付金は、給与額や就労日数によって支給額が変動する複雑な仕組みになっているため、事前のシミュレーションが欠かせません。
ここでは、収入を計算するための手順をステップごとに解説します。

ステップ1:会社から支払われる給与額を確認する

半育休で働く際の給与は、会社との個別の合意に基づいて決定されます。
一時的・臨時的な就労であるため、通常の月給制とは異なり、働いた時間や日数に応じた時給制や日給制で支払われることが一般的です。
具体的な金額や計算方法は、会社の規定や業務内容によって変わるため、制度を利用する前に必ず人事労務担当者に確認しましょう。
どのような業務を、どのくらいの頻度で、いくらの報酬で行うのかを明確にしておくことが重要です。

ここで合意した給与額が、次のステップで解説する育児休業給付金の支給額を算定する上での基礎情報となります。

ステップ2:育児休業給付金の支給額を計算する

育児休業給付金の基本的な支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」という計算式で算出されます。
育休開始から6か月が経過した後は、支給率が50%に下がります。
休業開始時賃金日額とは、原則として育児休業を開始する前の6か月間の賃金を180で割った金額です。

ただし、これは一切就労しなかった場合に満額支給される際の計算方法です。
半育休で会社から給与が支払われる場合は、その金額に応じて給付金が減額されたり、不支給になったりする調整が入ります。
そのため、この基本計算式で算出した金額がそのまま受け取れるわけではない点に注意が必要です。

【重要】働き方によって給付金の支給額は変動する

半育休中の育児休業給付金は、選択する働き方によって支給額が大きく変動します。
具体的には、1か月あたりの「就労日数・時間」と「会社から支払われる給与額」という2つの基準で支給額が調整される仕組みです。
収入を増やそうと計画なく働いてしまうと、かえって給付金が大幅に減額されたり、不支給になったりして、総収入が減少する可能性もあります。

自身の状況に合わせて最適な働き方を選択するためには、この支給調整のルールを正確に理解しておくことが不可欠です。
以下で、具体的なパターンに分けて詳しく解説します。

パターンA:月の就労日数が10日(または80時間)以下の場合

月の就労日数が10日以下、または10日を超える場合でも就労時間が80時間以下であれば、育児休業は継続しているとみなされ、給与額に応じた給付金が支給されます。
この場合の調整ルールは3段階です。
まず、会社からの給与が「休業開始時賃金月額」の13%以下であれば、給付金は満額(賃金月額の67%)支給されます。

次に、給与が13%を超え80%未満の場合は、「賃金月額の80%」から支払われた給与を差し引いた額が給付金として支給されます。
最後に、給与が賃金月額の80%以上に達すると、その月の給付金は全額不支給となります。

パターンB:月の就労日数が10日(または80時間)を超える場合

1か月の支給単位期間において、就労日数が10日を超え、なおかつ就労時間が80時間を超えた場合は、その期間は育児休業をしていないと判断されます。
この場合、会社から支払われる給与額にかかわらず、その支給単位期間の育児休業給付金は全額不支給となります。

収入を増やしたい一心で働きすぎると、本来受け取れるはずだった給付金がゼロになってしまい、結果的に総収入が大きく減ってしまうリスクがあります。
半育休を利用する際は、この日数・時間の条件を超えないように、勤務スケジュールを慎重に管理することが極めて重要です。

社労士 小栗の
アドバイス

育休中の就労は「労働契約の変更」と理解する 育児休業中の就労は、原則として労働契約の一時的な変更として扱われます。この変更は会社との合意が必要であり、業務の内容、勤務日、時間、そして最も重要な報酬額について、あいまいなまま進めないことが肝心です。特に、給付金が減額されない「休業開始時賃金月額の13%以下」という給与水準を意識して働く場合は、その上限額を正確に計算し、超えないように厳密に管理する義務が労働者側にもあります。

【手取りシミュレーション】月収30万円のモデルケース

休業前の月収が30万円(休業開始時賃金月額)の人が、半育休を利用して月に8万円の給与を得た場合の収入を試算します。
まず、給与8万円は賃金月額30万円の約26.7%にあたり、「13%超80%未満」の区分に該当します。
このため、支給される給付金は「賃金月額の80%(24万円)から給与(8万円)を差し引いた額」となり、16万円が支給されます。

結果として、この月の総収入は給与8万円と給付金16万円を合計した24万円です。
ここから雇用保険料や所得税などの税金が引かれた金額が最終的な手取り額となります。
なお、育児休業給付金自体は非課税のため、所得税の課税対象にはなりません。

半育休中の社会保険料は免除される?

育児休業制度の大きなメリットの一つに、社会保険料の免除があります。
この免除制度は、半育休を利用して一時的に就労し、給与を得ている場合でも適用される可能性があります。

ただし、免除を受けるためには一定の条件を満たす必要があり、また、すべての保険料が対象となるわけではありません。
特に、健康保険・厚生年金保険と雇用保険では取り扱いが異なるため、その違いを正しく理解しておくことが家計管理の上で重要になります。

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除される条件

育児休業期間中は、所定の条件を満たすことで健康保険料と厚生年金保険料が被保険者負担分・事業主負担分ともに免免除されます。
この免除が適用されるのは、育児休業を開始した月(開始日と末日が同月の場合は14日以上の育休取得が必要)から、休業終了日の翌日が属する月の前月までです。
重要なのは、その月の末日に育児休業を取得していることです。

半育休として一時的に就労していても、会社に育児休業取得者として届け出られていれば、この条件を満たす限り保険料は免除されます。
給与が発生していても免除は継続されるため、経済的なメリットは非常に大きいと言えます。

雇用保険料は働いた分の給与から支払う必要がある

健康保険料や厚生年金保険料とは異なり、雇用保険料には育児休業中の免除制度が存在しません。
半育休中に会社から支払われる給与は、雇用保険の対象となる賃金とみなされるため、その給与額に応じた雇用保険料を納める義務があります。

したがって、半育休中の手取り額を計算する際は、会社から支給される給与総額から、定められた保険料率に基づいた雇用保険料が天引きされることを念頭に置く必要があります。
なお、育児休業給付金は雇用保険から支給されますが、この給付金自体から保険料が引かれることはありません。

社労士 小栗の
アドバイス

社会保険料免除の「月単位」ルールを徹底理解する 社会保険料の免除は、月単位で判断されます。特に、育児休業を「開始した月」と「終了する月」の取り扱いに注意が必要です。育休終了月の免除を受けるためには、「育児休業終了予定日の翌日が属する月の前月まで」というルールに加え、「終了日が月の末日であること」が非常に重要です(※厳密には2022年10月改正により、末日要件とは別に、同月内に14日以上の育休取得が必要なケースが加わりました)。免除期間の境目での就労は、社会保険料の自己負担額に直結するため、休業期間を1日単位で正確に設計し、免除条件を満たしているか会社に確認しましょう。

半育休を利用する前に知っておきたいメリット

半育休の利用は、経済的なメリットだけでなく、キャリア継続の観点からも利点があります。
育児に専念しながらも社会との接点を持ち続けることで、収入面の不安を軽減し、スムーズな職場復帰につなげることが可能です。

具体的にどのようなメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきます。

育休中でも収入を確保できる安心感を得られる

半育休を利用する最大のメリットは、経済的な安定を得やすい点です。
通常の育児休業では、収入が育児休業給付金のみとなり、休業前の手取り額と比較すると収入が減少します。

しかし、半育休であれば、その給付金に加えて会社からの給与収入も得られるため、世帯収入の落ち込みを緩和できます。
特に、子の誕生に伴って育児用品などの出費が増える時期において、収入源が複数あることは精神的な安心につながります。
家計への影響を最小限に抑えながら、育児に時間を使うことができるのは大きな利点です。

仕事から離れる期間が短くなり、スムーズに職場復帰できる

キャリアの観点では、完全な休業によるブランクを防げる点がメリットです。
長期間にわたり仕事から離れていると、復帰時に業務知識やスキルの陳腐化、社内の人間関係の変化などに戸惑うことがあります。
半育休を利用して一時的でも業務に関わることで、仕事の勘を維持し、最新の情報を得続けることができます。

また、同僚とのコミュニケーションが継続されるため、職場からの孤立感を防ぎ、復帰後の人間関係も円滑に再開しやすくなります。
これにより、本格的な職場復帰への心理的・物理的なハードルが下がり、円滑なキャリア継続が期待できます。

半育休を利用する際の注意点・デメリット

半育休は多くのメリットがある一方で、制度を正しく理解せずに利用すると意図しない結果を招くこ

とがあります。
給付金の減額や不支給といったリスク、制度利用の前提条件など、事前に把握しておくべき注意点やデメリットが存在します。

後悔しないためにも、これらの点を十分に確認してから利用を検討することが重要です。

働きすぎると給付金が減額または不支給になる可能性がある

半育休で最も注意すべき点は、就労時間や給与額が一定の基準を超えると、育児休業給付金が減額されたり、不支給になったりすることです。
特に、月の就労が10日または80時間を超えると、その月は給付金が一切支給されません。
また、この条件をクリアしても、給与額が高すぎると給付金が減額されます。

良かれと思って働きすぎた結果、「給与+給付金」の合計額が、働かずに給付金を満額もらうよりも少なくなる「働き損」の状態に陥る危険性があります。
事前の収入シミュレーションと、計画的な勤務管理が不可欠です。

恒常的なテレワークや時短勤務は原則として対象外

育児休業給付金が支給される半育休の就労は、あくまで「一時的・臨時的」なものに限られます。
例えば、毎週月曜日の午前中は必ず勤務するといった、恒常的・定期的な働き方は、育児休業中とはみなされず、給付金の支給対象外となる可能性が高いです。

半育休は、繁忙期に数日間だけ手伝う、急なトラブルに対応するなど、突発的または臨時的な業務を想定した制度です。
時短勤務やテレワークであっても、それが定常的な業務であれば育児休業からの職場復帰と判断される場合があります。
会社と就労の性質について、事前に十分な認識合わせが必要です。

会社の承認がなければ半育休は利用できない

育児休業中に就労することは、労働者が一方的に決められるものではなく、必ず勤務先の承認が必要です。
労働者側が半育休を希望しても、会社が業務上の必要性を認めなかったり、労務管理が煩雑になることを理由に断ったりするケースも考えられます。

育児休業中の就労については、事前に労使間で業務内容、勤務時間、報酬などについて十分に協議し、合意形成を図ることが大前提となります。
特に、産後パパ育休中の就労に関しては、あらかじめ労使協定を締結しておくことが法律上の要件とされています。
まずは自社の就業規則などを確認し、担当部署に相談することから始めましょう。

まとめ

半育休は育児休業中の収入減少を補い、キャリアのブランクを防ぎながら円滑な職場復帰を支援する有効な制度です。
収入源が「給与」と「育児休業給付金」の2つになりますが、働き方によっては給付金が減額または不支給となるリスクがあるため、就労日数や給与額の上限を正しく理解することが不可欠です。

また健康保険料・厚生年金保険料は条件を満たせば免除されますが、雇用保険料は給与から支払う必要があります。
制度のメリットを最大限に活かすためには事前に会社の担当者と就労条件を十分に協議し、自身の収入がどう変動するのかをシミュレーションしておくことが重要です。

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