従業員が無給休暇を取得した際の給与計算方法について、正確に理解することは労務管理において不可欠です。
無給休暇は、年次有給休暇や企業が独自に定める特別休暇とは異なり、原則として給与が支払われません。
そのため、給与計算では休暇日数に応じた控除が必要となります。
本記事では、無給休暇の基本的な定義から、他の休暇制度との違い、具体的な計算方法、そして制度を運用する上での法的な注意点までを詳しく解説します。
この記事の監修

日本ペイロール株式会社
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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そもそも無給休暇とは?給与が支払われない休暇のこと
無給休暇とは、労働契約に基づき労働の義務は免除されるものの、その期間中の賃金が支払われない休暇制度を指します。
これは、労働基準法で定められた年次有給休暇とは異なり、法律で取得が義務付けられているものではありません。
無給休暇には、育児・介護休業法に基づく子の看護休暇や介護休暇のような法定休暇と、企業が福利厚生の一環として独自に設ける慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの法定外休暇(特別休暇)があります。
これらの休暇を有給とするか無給とするかは、企業の就業規則の定めによります。
無給休暇を取得した場合、その日数分の給与は支払われないため、給与計算上は「欠勤控除」と同様の扱いとなり、月給から該当分が差し引かれます。

無給休暇と他の休み方との違いを比較
従業員の休み方には、無給休暇の他にも有給休暇、欠勤、特別休暇、休職、代休など様々な種類があります。
これらの違いを正しく理解することは、適切な労務管理と給与計算のために非常に重要です。
特に、賃金の支払いの有無、事前の承認の要否、法的な位置づけといった点で明確な差異が存在します。
それぞれの休みの性質を把握し、混同しないように区別することで、労使間のトラブルを未然に防ぐことにつながります。
有給休暇との違い:賃金が支払われるかどうか
無給休暇と有給休暇の最も大きな違いは、休暇を取得した期間に賃金が支払われるかどうかという点です。
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり、一定の要件(雇入れから6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤)を満たした従業員に付与されます。
従業員がこの権利を行使して有給休暇を取得した場合、会社は通常の勤務日と同様に賃金を支払わなければなりません。
一方で、無給休暇は、従業員が休みを取得することは承認されるものの、その期間に対する賃金は発生しません。
このように、休暇中の賃金支払いの有無が両者の決定的な差異となります。
欠勤との違い:事前に承認を得ているかどうか
無給休暇と欠勤は、どちらも賃金が支払われず、給与計算上は欠勤控除の対象となる点で共通しています。
しかし、両者の間には「会社からの事前の承認を得ているか」という決定的な違いがあります。
無給休暇は、就業規則などの社内規定に基づき、従業員が事前に所定の手続きを踏んで申請し、会社がそれを承認した上で取得する休暇です。
一方、欠勤は、従業員が正当な理由なく、または事前の連絡や手続きを経ずに、本来労働すべき日に出勤しない状態を指します。
そのため、欠勤は労務提供義務の不履行と見なされ、人事評価や賞与の査定においてマイナスの影響を与える可能性があります。
特別休暇との違い:法律で定められているか
特別休暇は、法律で定められた法定休暇とは別に、企業が従業員の福利厚生などを目的として独自に設ける休暇制度です。
代表的なものに、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、誕生日休暇などがあります。
この特別休暇が有給であるか無給であるかは、法律上の定めはなく、完全に各企業の裁量に委ねられています。
就業規則や労働契約で「有給」と定められていれば賃金が支払われ、「無給」と定められていれば賃金は支払われません。
つまり、無給と規定されている特別休暇は、無給休暇の一種と位置づけられます。
したがって、すべての特別休暇が無給休暇に該当するわけではないという点が重要なポイントです。

社労士 小栗の
アドバイス
無給期間が長期化する場合の社会保険料・住民税の取り扱い > 無給休暇を取得し、会社からの給与支給額がゼロまたは非常に少額になったとしても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者資格は継続します。したがって、社会保険料と住民税は通常通り控除・徴収する義務が会社にあります。給与から控除しきれない場合は、労働者に直接請求し、会社指定の期日までに振り込んでもらうなど、別途徴収する仕組みを確立し、就業規則や休業規程で明確に定めておく必要があります。この手続きを怠ると、保険料の滞納や未払いにつながるため、実務上の注意が不可欠です。
休職との違い:休む理由と期間の長さ
休職とは、主に私傷病など従業員個人の都合により、長期間にわたって働くことが困難になった場合に、会社に籍を置いたまま労働を免除される制度です。
無給休暇が比較的短期の休みを想定しているのに対し、休職は数ヶ月から数年に及ぶ長期の休みとなることが一般的です。
また、休職期間中の賃金の取り扱いは、企業の就業規則によりますが、無給となるケースがほとんどです。
その場合、月給は支払われませんが、社会保険の被保険者資格は継続するため、従業員は社会保険料の自己負担分を会社に支払う必要が生じます。
このように、休む理由の深刻度と期間の長さが、無給休暇と休職の主な違いと言えます。
無給休暇に該当する休暇の主な種類
無給休暇には、法律に基づいて従業員に取得する権利が認められている「法定休暇」と、企業が福利厚生の一環として任意で設ける「法定外休暇(特別休暇)」の2つに大別されます。
重要なのは、これらの休暇が法律や制度として存在していても、その期間を「有給」にするか「無給」にするかは、企業の就業規則の定めに委ねられている場合が多いという点です。
例えば、代休のように制度の性質上、賃金が発生しない休みもあれば、慶弔休暇のように企業によって扱いが異なるものもあります。

産前産後休業や育児・介護休業などの法定休暇
法律で定められている休暇を「法定休暇」と呼びます。
具体的には、労働基準法に基づく産前産後休業や、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇などが該当します。
これらの法定休暇について、法律は休暇の取得を保障していますが、その期間中の賃金支払いまでは義務付けていません。
そのため、多くの企業ではこれらの休暇を無給として扱っています。
給与計算上、これらの休暇を取得した日数分は、基本給などから控除されることになります。
ただし、賃金が支払われない代わりに、健康保険から出産手当金が、雇用保険から育児休業給付金や介護休業給付金が支給される制度が設けられています。
会社が独自に定める慶弔休暇やリフレッシュ休暇
企業が福利厚生の一環として、法律の定めとは別に従業員に与える休暇を「法定外休暇」または「特別休暇」と呼びます。
これには、従業員やその家族の冠婚葬祭の際に取得できる慶弔休暇、勤続年数に応じて付与されるリフレッシュ休暇、誕生日休暇、ボランティア休暇など、様々な種類があります。
これらの休暇は法律で義務付けられたものではないため、制度を設けるかどうか、また設ける場合に有給とするか無給とするかは、完全に企業の裁量に委ねられています。
就業規則で無給と定められている場合、これらの特別休暇は無給休暇として扱われ、取得した日数分は給与から控除されることになります。
無給休暇を取得した際の給与計算方法【具体例つき】
従業員が無給休暇を取得した場合、その月の給与からは休暇日数分の賃金が控除されます。
この控除処理は一般的に「欠勤控除」と呼ばれ、正しい給与計算方法を理解し、適用することが不可欠です。
計算を誤ると、賃金の未払いや過払いといった問題につながる可能性があります。
ここでは、給与から控除される金額を算出するための基本的な計算方法と、月給制の従業員を例にとった具体的なシミュレーションについて解説します。

給与から控除される金額の基本的な計算式
無給休暇を取得した従業員の給与計算では、欠勤控除の考え方を用いて控除額を算出します。
基本的な計算方法は、「1日あたりの賃金額×無給休暇の取得日数」となります。
この計算式において最も重要なのが「1日あたりの賃金額」の算出方法です。
一般的には「控除対象となる月給額÷その月の所定労働日数」という式で計算します。
月給額にどの範囲の手当(役職手当、資格手当など)を含めるか、また分母となる所定労働日数を月ごとに変動させるか、あるいは年間の平均日数で固定するかといった細かなルールは、就業規則の給与規程などで明確に定めておく必要があります。
これにより、公平で一貫性のある控除が可能となります。
【月給制の場合】具体的な給与計算のシミュレーション
ここでは、月給制の従業員が無給休暇を取得した場合の給与計算を具体例で見ていきます。
前提条件
月給:320,000円(内訳:基本給280,000円、諸手当40,000円)
控除の対象:月給の全額
対象月の所定労働日数:20日
無給休暇の取得日数:2日
まず、1日あたりの賃金額を算出します。
計算式:320,000円÷20日=16,000円
次に、算出した1日あたりの賃金額に無給休暇の取得日数を掛けて控除額を求めます。
計算式:16,000円×2日=32,000円
最後に、月給から控除額を差し引いて、その月の支給額を確定させます。
計算式:320,000円-32,000円=288,000円
この結果、この従業員のその月の支給額は288,000円となります。
無給休暇を運用する際に企業が注意すべき4つのポイント
無給休暇制度を適切に運用するためには、給与計算を正しく行うだけでなく、法律を遵守し、労使間のトラブルを未然に防ぐための視点が欠かせません。
特に、労働者の権利である年次有給休暇との関係性や、会社の都合による休業との区別は重要です。
また、制度の根幹となる就業規則の整備を怠ると、予期せぬ問題に発展する可能性があります。
ここでは、企業が無給休暇制度を運用する上で、特に注意すべき4つのポイントを解説します。
従業員に無給休暇の取得を強制することはできない
休暇の取得は、あくまで従業員の自発的な意思に基づいて行われるべきものです。
会社の業績不振や業務量の減少といった理由で、企業が一方的に従業員に対して無給休暇の取得を強制することは認められません。
もし会社側の都合で従業員を休ませる場合は、「休業」として扱われ、労働基準法第26条に基づき、会社は従業員に対して平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が発生します。
また、年次有給休暇が残っている従業員に対して、有給休暇を消化させずに無給休暇を取得するよう指示することも、労働者の権利を侵害する行為となるため注意が必要です。
有給休暇の申請を無給休暇へ変更するのは違法
年次有給休暇は、法律によって労働者に認められた正当な権利です。
従業員から有給休暇の取得申請があった場合、会社は原則としてこれを承認しなければなりません。
会社側には、申請された日に休暇を与えると「事業の正常な運営を妨げる」場合に限り、別の日に取得時季をずらすよう求める「時季変更権」が認められています。
しかし、この権利はあくまで取得日を変更するものであり、従業員が申請した有給休暇を、会社の都合で一方的に無給休暇に変更することはできません。
このような行為は労働基準法に違反するため、絶対に行ってはなりません。
無給休暇の取得ルールを就業規則で明確に定める
無給休暇に関する労使間のトラブルを防止するためには、就業規則に取得ルールを明確に定めておくことが極めて重要です。
規定すべき内容としては、どのような場合に無給休暇を取得できるのか(取得事由)、申請手続きの方法や期限、取得できる日数、そしてどの休暇が無給の対象となるか、といった項目が挙げられます。
特に、慶弔休暇などの法定外の特別休暇については、有給なのか無給なのかを明確に記載しておく必要があります。
ルールを明文化し、全従業員に周知徹底することで、公平性と透明性が担保され、安定した制度運用につながります。
会社の都合による休業は手当の支払いが必要なケースもある
従業員の自己都合による申請に基づく「無給休暇」と、会社の都合によって従業員を休ませる「休業」は、法的に明確に区別する必要があります。
例えば、工場の機械トラブルや資材の納入遅延、経営不振といった会社側の事由で操業を停止し、従業員を休ませる場合、これは労働基準法第26条に定められた「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。
この場合、会社は従業員に対し、休業期間中の休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う義務を負います。
これを無給休暇として処理し、賃金を支払わない給与計算方法を適用すると違法行為となるため、厳格な区別が求められます。
まとめ
無給休暇は、従業員が休みを取得するものの賃金が支払われない休暇制度です。
給与計算方法としては、月給をその月の所定労働日数で割り、1日あたりの賃金額を算出した上で、無給休暇の取得日数分を控除するのが一般的です。
この際、控除の対象となる賃金の範囲や計算の基準については、あらかじめ就業規則で明確に定めておく必要があります。
また、無給休暇と有給休暇や欠勤、特別休暇との違いを正しく理解し、会社の都合で取得を強制したり、有給申請を無給に変更したりすることのないよう、法的なルールを遵守した運用が求められます。