マネーフォワードクラウド給与は、毎月の煩雑な給与計算を自動化し、業務効率を大幅に向上させるクラウド型の給与計算システムです。
この給与計算ソフトの導入を検討している、または導入して間もない企業の担当者に向けて、基本的な使い方から初期設定、具体的な計算手順、さらに関連業務との連携方法までを網羅的に解説します。
本記事を通じて、マネーフォワードクラウドの機能を最大限に活用し、給与計算業務の負担を軽減するための知識を得られます。
この記事の監修

日本ペイロール株式会社
これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。
現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。
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マネーフォワードクラウド給与で給与計算が楽になる3つの理由
毎月の給与計算は、手作業による集計や複雑な計算が多く、担当者の大きな負担となっています。
特に、法改正や社会保険料率の変更に都度対応する必要があり、正確性と迅速性が求められます。
マネーフォワードクラウド給与を導入すると、これらの課題を解決し、業務を大幅に効率化することが可能です。
インターネット環境さえあればどこからでもログインして利用でき、計算の自動化やペーパーレス化といった多くのメリットを享受できます。

手作業による計算ミスや確認の手間を大幅に削減できる
従来の給与計算では、勤怠情報や各種手当を手入力で集計する過程で、計算ミスや転記ミスが発生しやすいという課題がありました。
特に、残業代や社会保険料の計算は複雑で、何度も確認作業が必要になります。
マネーフォワードクラウド給与は、勤怠管理システムと連携させることで、従業員の労働時間を自動で取り込み、給与を自動計算します。
これにより、手入力の工程が大幅に削減され、人為的なミスの発生リスクを大きく低減させます。
計算結果も自動で給与明細に反映されるため、担当者が行う作業は最終確認のみとなり、確認にかかる時間と心理的な負担も軽減されます。
一度情報を入力すれば、毎月の作業は変動部分の確認だけで済みます。

社労士 小栗の
アドバイス
残業代の計算は「割増賃金の基礎」が重要</h4> <p>給与計算システムを導入しても、残業代(割増賃金)の「計算の基礎となる賃金」に含める手当と含めない手当の区分を誤ると、正しい残業代が計算できません。システムに任せる前に、家族手当や通勤手当など、除外できる手当の範囲を労働基準法に基づいて正確に設定しておくことが、法的なリスクを回避する上で極めて重要です。初期設定時に、自社の手当項目が労働基準法施行規則第21条に定める「除外賃金」に該当するかどうかを慎重に確認しましょう。
法改正や保険料率の変更に自動でアップデート対応する
健康保険や厚生年金保険といった社会保険料の料率は定期的に見直され、所得税に関連する法改正も頻繁に行われます。
従来は、担当者が自ら最新情報を収集し、計算式や設定に反映させる必要がありました。
マネーフォワードクラウド給与はクラウド型のサービスであるため、こうした法改正や保険料率の変更にシステム側で自動的にアップデート対応します。
担当者が手動で料率を変更したり、計算方法を調べ直したりする手間が一切不要となり、常に最新の法令に準拠した状態で給与計算を行えます。
標準報酬月額の改定にも対応しているため、法令遵守の観点からも安心して利用を続けられます。
Web給与明細の発行で印刷や配布のコストが不要になる
紙の給与明細書は、印刷代、用紙代、封筒代、郵送費といった直接的なコストがかかるだけでなく、明細書の封入や配布といった作業にも多くの時間と人手を要します。
マネーフォワードクラウド給与のWeb給与明細機能を利用すれば、これらの課題をすべて解決できます。
給与計算が確定すると同時に、従業員は自身のスマートフォンやパソコンから給与明細をいつでも閲覧できるようになります。
これにより、ペーパーレス化が実現し、印刷や配布に関連するあらゆるコストと手間を削減することが可能です。
テレワークを導入している企業においても、安全かつ確実に従業員へ給与明細を届けることができます。

社労士 小栗の
アドバイス
Web給与明細を導入する際は、労働基準法に基づき、従業員(または労働組合)からの書面または電磁的記録による承諾(同意)を得る必要があります。単にシステムを導入したからといって、一方的に紙での発行を停止することはできません。同意を得るための手続きや文書を整備し、システム稼働前に全従業員からの承諾を確実に取得しましょう。また、同意を得られない従業員には、引き続き紙で発行する体制も必要です。
給与計算を始める前に必要な初期設定3ステップ
マネーフォワードクラウド給与を導入し、正確な給与計算を行うためには、最初に事業所や従業員に関する情報を正しく設定することが不可欠です。
この初期設定を丁寧に行うことで、その後の毎月の給与計算業務が格段にスムーズになります。
設定項目は多岐にわたりますが、主に「事業所の基本情報登録」「社会保険情報の設定」「従業員情報の登録」という3つの大きなステップに分けられます。
画面の案内に従って進めることで、迷うことなく設定を完了させられます。

ステップ1:事業所の基本情報や支給日などを登録する
まず、自社の基本的な情報を登録します。
会社名や所在地といった事業所の情報に加えて、給与計算の基準となる締め日と支給日を設定します。
例えば、「月末締め・翌月25日払い」など、企業の給与規定に合わせた日付を正確に入力します。
この設定はすべての計算の土台となるため、間違いのないように慎重に行う必要があります。
また、労働保険(労災保険・雇用保険)に関する情報として、事業の種類や労働保険番号も登録します。
これらの情報は年度更新の申告書作成時などにも利用される重要なデータです。
画面の指示に従って項目を埋めていくだけで、基本的な設定は完了します。
ステップ2:健康保険や厚生年金などの社会保険情報を設定する
次に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険といった社会保険に関する情報を設定します。
事業所が加入している健康保険組合を選択し、適用される保険料率が自動で設定されるようにします。
全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している場合は、事業所の所在地である都道府県を選ぶだけで、正しい保険料率が自動で反映されます。
厚生年金基金に加入している場合は、その情報も登録します。
これらの設定を正しく行うことで、従業員個人の負担分と会社負担分の社会保険料が、毎月自動で正確に計算される基盤が整います。
ステップ3:従業員ごとの給与情報や扶養家族を登録する
最後に、給与計算の対象となる従業員一人ひとりの詳細情報を登録していきます。
氏名や住所といった基本情報はもちろん、入社年月日、雇用形態、基本給、固定の手当などを設定します。
特に、所得税の計算に直接影響する扶養家族の情報は、続柄や生年月日を含めて正確に入力することが重要です。
通勤手当のように非課税枠が定められている手当も、金額と課税区分を正しく設定します。
これらの情報は従業員ごとに手入力で登録しますが、従業員数が多い場合は、CSVファイルを利用して一括でインポートすることも可能です。
この機能を活用すれば、初期設定にかかる時間を大幅に短縮できます。
マネーフォワードクラウド給与を使った給与計算の具体的な手順
初期設定が完了したら、毎月の給与計算業務を開始できます。
マネーフォワードクラウド給与では、勤怠データの取り込みから給与計算の確定まで、一連のプロセスがシステム上でスムーズに完結するように設計されています。
専門的な知識がなくても、画面の案内に沿って操作を進めるだけで、正確な給与計算が可能です。
この手順に慣れれば、毎月の定型業務を効率的に処理できるようになります。
月々の給与計算はもちろん、賞与計算にも同じような流れで対応できます。
勤怠データを連携して従業員の労働時間を自動で取り込む
給与計算を開始する最初のステップは、従業員の勤怠情報をシステムに取り込むことです。
マネーフォワードクラウド勤怠などの勤怠管理システムを利用している場合は、API連携機能を使って、出退勤時刻、労働時間、残業時間、欠勤日数といったデータをワンクリックで自動取得できます。
他社の勤怠管理システムを利用している場合でも、勤怠データをCSVファイル形式で出力し、マネーフォワードクラウド給与にインポートすることが可能です。
この連携により、手作業でのデータ転記が不要となり、入力ミスを防ぎながら集計作業の時間を大幅に削減します。
担当者は取り込まれたデータに相違がないかを確認するだけで、次の工程に進めます。
残業代や通勤手当などの総支給額を算出する
勤怠データが取り込まれると、その情報に基づき、時間外労働手当、深夜労働手当、休日労働手当などが自動で計算されます。
割増賃金の計算に必要な基礎単価は、事前に従業員情報に登録した基本給や諸手当から自動的に算出されるため、担当者が複雑な計算を行う必要はありません。
役職手当や通勤手当など、毎月固定で支払われる手当は登録済みの金額が自動で反映されます。
もし、その月だけ発生するインセンティブなどの変動手当がある場合は、該当する従業員の給与計算画面で直接金額を入力して調整します。
これらの計算を経て、基本給と各種手当を合算した総支給額が確定します。
社会保険料や所得税などの控除額を自動計算する
総支給額が算出されると、次に控除額の計算が自動的に実行されます。
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料などの社会保険料は、事前に設定した標準報酬月額と最新の保険料率に基づいて自動で算出されます。
雇用保険料も、総支給額に定められた料率を乗じて計算されます。
所得税(源泉徴収税額)は、課税対象となる支給額と登録済みの扶養親族の人数から、税額表に基づいて自動的に決定されます。
住民税に関しては、各市区町村から通知された金額をあらかじめ登録しておくことで、毎月その額が控除される仕組みです。
これらの自動計算機能により、手作業による計算ミスを防ぎ、正確な差引支給額を算出できます。
計算内容を確認して当月分の給与を確定させる
総支給額と控除額の計算が完了したら、給与を確定させる前に最終確認を行います。
従業員一覧画面では、各従業員の総支給額、控除合計額、差引支給額などを一覧でチェックできます。
個別の計算内容に疑問がある場合は、従業員の詳細画面を開き、勤怠の内訳や手当、控除項目を細かく確認することが可能です。
すべての計算内容に問題がないことを確認したら、「給与計算を確定する」ボタンをクリックします。
この確定処理により、その月の給与データがロックされ、Web給与明細の発行や振込データの作成、会計ソフトへの連携といった後続の作業に進める状態になります。
万が一、確定後に修正が必要になった場合でも、確定を解除して再計算することが可能です。
給与計算後の振込から会計処理までを効率化する方法
マネーフォワードクラウド給与の利点は、単に給与計算を自動化するだけにとどまりません。
計算完了後に発生する給与の振込業務や、会計帳簿への記帳といった一連の関連業務までを効率化する連携機能が充実しています。
これらの機能を活用することで、手作業によるデータの二重入力や転記の手間を根本からなくし、バックオフィス業務全体の生産性を大きく向上させることが可能です。
給与計算から会計処理までの流れを一気通貫でシステム化できます。

作成した振込データでインターネットバンキングに連携する
給与計算を確定させると、その結果に基づいて全銀フォーマット形式のFBデータを作成できます。
このデータをダウンロードし、利用中の金融機関が提供するインターネットバンキングのシステムにアップロードするだけで、全従業員への給与振込手続きを一括で完了させることが可能です。
これにより、振込先の口座情報や金額を一件ずつ手入力する手間が省け、入力ミスによる振込事故のリスクを大幅に低減できます。
また、給与の総合振込データだけでなく、住民税の納付用のデータも作成できるため、納税業務の効率化にも貢献します。
給与計算の結果を会計ソフトに仕訳として自動連携させる
確定した給与計算データは、会計処理に必要な仕訳データとして自動で作成されます。
特に、マネーフォワードクラウド会計・確定申告を利用している場合、ボタン一つでこの仕訳データを会計システムに連携させられます。
「給料手当」「法定福利費」「預り金」といった勘定科目も、あらかじめ設定しておくことで自動的に振り分けられます。
この自動連携機能により、給与データを会計ソフトに手入力で転記する必要がなくなり、二重入力の手間と転記ミスを排除できます。
結果として、月次決算の早期化にもつながり、経理担当者の業務負担を大きく軽減します。
他社の会計ソフトを利用している場合でも、仕訳データをCSV形式で出力し、インポートすることで対応が可能です。
まとめ
マネーフォワードクラウド給与は、計算の自動化、法改正への自動追従、Web給与明細の発行といった多角的な機能により、複雑で手間のかかる給与計算業務を大幅に効率化します。
初期設定を完了させれば、毎月の作業は勤怠データの取り込みと内容確認が中心となり、担当者の負担は大きく軽減されます。
さらに、インターネットバンキングと連携した振込データの作成や、会計ソフトへの自動仕訳連携機能を活用することで、給与計算後の周辺業務まで一貫してスムーズに行えます。
料金プランは事業所の従業員数などに応じて複数用意されており、導入前に機能を試せる無料トライアル期間もあります。
まずは無料プランで操作性を確認し、自社の運用に適しているか検討することをおすすめします。