050-3529-5691 平日9:00〜17:00 お問い合わせ

コラム

月の途中で退職した際の給与計算|日割り方法と注意点をわかりやすく解説

2025.09.11

月の途中で退職する場合、最終月の給与は満額ではなく日割りで計算されるのが一般的です。

この月途中の退職に伴う給与計算は、基本給の日割り方法や各種手当の扱いに加え、社会保険料や税金の控除ルールも通常とは異なるため、仕組みが複雑に感じられるかもしれません。

この記事では、月途中で退職した際の給与計算について、総支給額の算出から控除額の計算、そして退職時に知っておくべき注意点までをわかりやすく解説します。

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

社会保険労務士 小栗多喜子のプロフィール紹介はこちら
https://www.tokai-sr.jp/staff/oguri

取材・寄稿のご相談はこちらから

月の途中で退職した場合の給与計算の基本的な考え方

月途中で退職した場合の給与は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、実際に労働した日数や時間に応じて支払われます。

そのため、基本給は在籍日数や出勤日数に応じて日割り計算され、通勤手当なども実費精算となるのが一般的です。

一方で、給与から差し引かれる社会保険料や税金は、退職日によって扱いが大きく異なります。

特に社会保険料は、月末に在籍しているかどうかで控除の有無が決まるため、総支給額だけでなく手取り額を正しく理解するためには、これらの控除の仕組みを把握しておくことが重要です。

【総支給額の計算】基本給の日割り計算3つのパターン

月途中で退職する際、基本給は日割りで計算されますが、その具体的な計算方法は法律で定められていません。したがって、どの方法を用いるかは各企業が就業規則で定めています。

主な計算パターンは、「その月の暦日数」「その月の所定労働日数」「年間の月平均所定労働日数」を基準にする3つです。

どの計算方法が適用されるかによって支給額は変動するため、自身の会社の就業規則をあらかじめ確認しておくことが大切になります。

パターン1:その月の暦日数をもとに計算する方法

基本給をその月の暦日数で割り、1日あたりの単価を算出した後、入社日から退職日までの在籍日数を掛けて支給額を決定する方法です。
計算式は「月給÷その月の暦日数×在籍日数」となります。

例えば、月給30万円の人が暦日数31日の月に15日まで在籍して月途中で退職した場合、30万円を31日で割った額に15日を掛けて給与を算出します。
この方法は、土日祝日などの休日も在籍日数に含まれて計算される点が特徴です。
計算の基準となる暦日数が月によって変動するため、1日あたりの給与単価も毎月変わります。

パターン2:その月の所定労働日数をもとに計算する方法

月給をその月の所定労働日数(企業が定めた1ヶ月の労働日数)で割り、実際に出勤した日数を掛けて支給額を算出する方法です。
計算式は「月給÷その月の所定労働日数×出勤日数」で表されます。

例えば、月給30万円、その月の所定労働日数が20日で、10日間出勤して月途中で退職した場合、15万円が支給額となります。

この方法は、祝日が多い月など所定労働日数が少ない月に退職すると、1日あたりの単価が高くなる傾向にあります。

実際に働いた日数に基づいて給与が計算されるため、公平性が高く、多くの企業で採用されている方式です。

パターン3:年間の月平均所定労働日数をもとに計算する方法

年間の総所定労働日数を12ヶ月で割り、月平均の所定労働日数を算出し、これを基準に日割り計算を行う方法です。
計算式は「月給÷年間の月平均所定労働日数×出勤日数」となります。

この方法の大きな特徴は、月ごとの所定労働日数の変動に左右されず、年間を通じて1日あたりの給与単価が一定になる点です。
そのため、月途中で退職する場合でも、退職する月によって有利・不利が生じにくく、公平性を担保しやすい計算方法として導入されています。
この方法を採用しているかどうかは、企業の就業規則や給与規程で確認する必要があります。

【総支給額の計算】通勤手当や残業代など各種手当の扱い

月途中で退職する際は、基本給だけでなく各種手当がどのように扱われるかも重要です。
残業代や休日出勤手当は、実績に応じて計算され、最後の給与に加算されます。

通勤手当は、1ヶ月や3ヶ月分の定期代として前払いされていても、退職日までの実費を差し引いた差額を返金するか、出勤日数に応じた日割り計算で精算されるのが一般的です。

役職手当や住宅手当といった固定手当の扱いは企業によって異なり、日割り計算される場合もあれば、支給されないケースもあるため、就業規則で確認することが不可欠です。

【控除額の計算】社会保険料は退職日によって金額が変わる

月途中の退職において、特に注意が必要なのが社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)の扱いです。

社会保険料は、原則として「月の末日」に在籍している被保険者に対して、その月分の支払い義務が発生します。

このため、退職日が月の途中か月末日かによって、最後の給与から控除される社会保険料の金額が大きく変動します。

このルールを理解しておかないと、想定していた手取り額と実際の金額に差異が生じる可能性があるため、退職日を決める際の重要な判断材料となります。

月の途中で退職した場合の社会保険料の控除ルール

月の末日よりも前に退職した場合、その月の社会保険料は退職する会社では発生しません。社会保険の資格喪失日は退職日の翌日となり、資格を喪失した月については保険料の納付義務がないためです。

例えば9月20日に退職すると資格喪失日は9月21日となり、9月分の保険料はかかりません。

多くの企業は前月分の社会保険料を当月給与から控除しているため、この場合、最後の給与からは8月分の社会保険料のみが差し引かれます。

月途中で退職した後は、速やかに国民健康保険・国民年金への切り替えか、転職先の社会保険への加入手続きが必要です。

月末に退職した場合の社会保険料の控除ルール

月末日(例:9月30日)に退職した場合、社会保険の資格喪失日は翌月の1日(10月1日)になります。
この場合、退職月の末日時点ではまだ被保険者資格があるため、退職月分(9月分)の社会保険料が退職する会社で発生します。

多くの企業では社会保険料を翌月払いにしているため、最後の給与からは前月分(8月分)と当月分(9月分)の2ヶ月分がまとめて控除されることがあります。
月途中で退職するケースと比較して手取り額が大きく減少する可能性があるため注意が必要です。
ただし、当月徴収の企業の場合は1ヶ月分のみの控除となります。

社労士 小栗の
アドバイス

「月末に退職すると、社会保険料が2ヶ月分控除されてしまう」という点を覚えておきましょう。特に月末締め、翌月払いの企業では、退職月分と前月分の社会保険料がまとめて引かれるため、手取り額が想定よりも大幅に少なくなることがあります。退職日を調整できるのであれば、少し早めの月末前日退職も検討してみる価値があります。

【控除額の計算】雇用保険料・住民税・所得税の扱い

月途中で退職した場合、社会保険料以外に雇用保険料、住民税、所得税も最後の給与から控除されます。

雇用保険料は、退職日に関係なく、その月に支払われた給与総額に応じて計算されます。

住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職時期によって納付方法が変更されます。

所得税も通常通り最後の給与から源泉徴収されますが、年の途中で退職すると年末調整が行われないため、自身での確定申告が必要になる場合があります。

雇用保険料は最後の給与額に応じて計算される

雇用保険料の計算は、退職日が月の途中か月末かにかかわらず、その月に会社から支払われる給与の総支給額に基づいて行われます。
総支給額には、日割り計算された基本給のほか、残業代や各種手当も含まれます。
この総支給額に定められた雇用保険料率を掛けて算出された金額が、最後の給与から控除されます。
社会保険料のように、退職日によって保険料の発生有無が変わることはありません。
したがって、月途中で退職して給与額が少なくなった場合でも、その金額に応じた雇用保険料は必ず発生します。

住民税は退職時期によって納付方法が切り替わる

住民税は前年の所得に対して課税され、給与から天引き(特別徴収)されていますが、月途中で退職すると納付方法が変わります。

1月1日から5月31日までに退職した場合、その年の5月までの残りの住民税全額が、最後の給与から一括で徴収されます。

一方、6月1日から12月31日までに退職した場合は、最後の給与から一括徴収してもらうか、後日送られてくる納付書で自分で納付する普通徴収に切り替えるかを選択できます。

退職後の資金計画にも影響するため、どちらの方法になるか、あるいはどちらを選択するかを事前に会社に確認しておくことが望ましいです。

所得税は最後の給与からも源泉徴収される

所得税は、月途中で退職した場合でも、最後の給与から通常通り源泉徴収されます。
所得税額は、社会保険料などが控除された後の課税対象額と扶養親族の数に応じて決定されます。

ただし、年の途中で退職すると会社での年末調整が行われません。
そのため、払い過ぎた所得税の還付を受ける場合や、医療費控除などを適用したい場合には、退職後に受け取る源泉徴収票をもとに、自身で確定申告を行う必要があります。

退職後、年内に再就職した場合は、新しい勤務先に前職の源泉徴収票を提出することで、まとめて年末調整をしてもらうことが可能です。

月の途中で退職する際に知っておきたい給与計算の注意点

月途中で退職する際には、給与計算に関して事前に把握しておくべき点がいくつかあります。
給与の日割り計算の方法は法律で統一されているわけではなく、企業ごとにルールが異なるため、就業規則の確認が最も重要です。

また、退職後の住民税は支払い忘れが起こりやすく、遅延すると延滞金が発生するリスクもあります。
これらの注意点を事前に理解し、必要な手続きを把握しておくことで、退職に関するトラブルを避け、スムーズな移行を実現できます。

給与の日割り計算方法は会社の就業規則で確認する

月途中で退職する際の基本給の日割り計算方法は、法律で一律に定められていません。そのため、具体的な計算方法は各企業の就業規則や給与規程に委ねられています。

「暦日数で割る」「月の所定労働日数で割る」など、どの方法を採用しているかによって、最終的な支給額は変わってきます。退職の意思を伝える前や、給与明細の内容に疑問がある場合は、まず自社の就業規則を確認することが重要です。

もし規程に明記されていない、または内容がよくわからない場合は、人事部や労務担当者に直接問い合わせ、計算の根拠を明確にしてもらうことが、後のトラブルを防ぐことにつながります。

退職後の住民税の支払い手続きを忘れないようにする

月途中で退職し、特に6月から12月の間に会社を辞めた場合、住民税の納付方法が給与天引きの「特別徴収」から、自身で納付する「普通徴収」に切り替わることがあります。

この場合、後日、お住まいの市区町村から納付書が自宅に郵送されます。この納付書を使用して金融機関などで期限内に支払う必要がありますが、この手続きを忘れてしまうと督促を受けるだけでなく、延滞金が加算されることもあるため注意が必要です。

退職後すぐに転職する際は、新しい勤務先で特別徴収を継続する手続きを依頼できます。退職前に今後の住民税の支払い方法について、会社に確認しておくと安心です。

社労士 小栗の
アドバイス

離職票は雇用保険の手続きに、源泉徴収票は確定申告や転職先での年末調整に不可欠な書類です。会社には退職後10日前後で発行する義務があります。退職時にいつ頃発行されるかを確認し、受け取り方法を明確にしておきましょう。これらの書類が手元にないと、失業給付金の手続きや税金の精算が滞ってしまうため注意が必要です。

まとめ

月途中で退職する際の給与計算は、基本給の日割り方法、各種手当の扱い、社会保険料や税金の控除ルールが複雑に絡み合います。基本給の計算方法は会社の就業規則によって異なり、支給額に直接影響します。

特に社会保険料は、退職日が月の途中か月末かで控除額が大きく変わるため、退職日を決める上で重要な要素です。住民税の納付方法の変更や、年末調整が行われないことによる確定申告の必要性も生じます。

月途中の退職を円滑に進めるためには、これらの仕組みを正しく理解し、自社の就業規則を確認した上で、最終的な給与がどのように計算されるかを事前に把握しておくことが求められます。

Contact

お問い合わせ・ご相談

給与計算に関することならお気軽にご相談ください。
無料相談はオンラインでも対面でも承っております。