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コラム

月途中入社の給与計算はどうする?日割り計算の方法と注意点を解説

2025.09.26

月の途中で入社した従業員の給与計算は、通常の月給とは異なり日割り計算が必要です。
法律で計算方法が定められているわけではないため、企業ごとに就業規則や賃金規程でルールを設けています。
そのため、給与計算の担当者は自社の規定を正しく理解し、適用しなければなりません。
この記事では、月途中入社における給与の日割り計算で一般的に用いられる3つの方法と、社会保険料や手当の扱いといった実務上の注意点を解説します。

これまで給与計算の部門でマネージャー職を担当。チームメンバーとともに常時顧問先350社以上の業務支援を行ってきた。加えて、chatworkやzoomを介し、労務のお悩み解決を迅速・きめ細やかにフォローアップ。

現在はその経験をいかして、社会保険労務士法人とうかいグループの採用・人材教育など、組織の成長に向けた人づくりを専任で担当。そのほかメディア、外部・内部のセミナー等で、スポットワーカーや社会保険の適用拡大など変わる人事労務の情報について広く発信している。

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月の途中で入社した場合の給与は日割りで支払われるのが一般的

月の途中で入社した場合、その月の給料は日割りで支払われるのが一般的です。
労働基準法には月途中入社の給与計算に関する明確な規定はなく、日割り計算が法的に義務付けられているわけではありません。
しかし、多くの企業では「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、実際に労働していない期間の賃金は支払わないという考え方を採用しています。
これは民法第624条で「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」と定められていることにも関連します。
そのため、月の途中から勤務を開始した従業員に対しては、在籍日数や出勤日数に応じた給与を支払う日割り計算を行うことが、公平性の観点からも合理的とされています。
具体的な計算方法は企業によって異なるため、就業規則や賃金規程で定められたルールに従って処理されます。

給与の日割り計算で用いられる主な3つの方法

月途中入社の給与日割り計算には、決まった計算式が存在するわけではありません。
どの方法を採用するかは企業の裁量に委ねられており、主に3つの方法が用いられるのが一般的です。
それぞれの計算方法で基準となる日数(分母)が異なるため、算出される給与額も変わってきます。
担当者は自社の就業規則や賃金規程でどの計算方法が定められているかを確認し、正しく適用する必要があります。
ここでは、それぞれの計算方法の具体的な計算式と特徴を解説します。

方法1:その月の日数(暦日数)を基準にする計算方法

この計算方法は、月給をその月の暦日数(30日や31日など)で割り、1日あたりの単価を算出して支給額を決定するものです。
計算式は「月給額÷その月の総日数×入社日から月末までの暦日数」となります。
例えば、月給31万円の人が8月16日に入社した場合、「31万円÷31日×16日間」で16万円が支給額です。
この方法のメリットは、計算がシンプルで分かりやすい点にあります。
一方で、分母となる暦日数が月によって異なるため、1日あたりの賃金単価が変動するという特徴も持ち合わせています。
2月のように日数が少ない月は単価が高くなり、日数の多い月は単価が低くなるため、入社月によって従業員間で不公平感が生じる可能性も考えられます。

方法2:その月の所定労働日数を基準にする計算方法

月給をその月の所定労働日数で割り、実際に出勤した日数分を支払う計算方法です。
計算式は「月給額÷その月の所定労働日数×実際の出勤日数」で表されます。
例えば、月給30万円でその月の所定労働日数が20日、実際の出勤が10日だった場合、「30万円÷20日×10日」で15万円が支給額となります。
この方法は、実際に働いた日数に基づいて給与が計算されるため、労働の対価という観点から見ると公平性が高いといえます。
ただし、祝日の日数などによって月ごとに所定労働日数が変動するため、給与計算の都度、分母となる日数を確認する必要があり、他の方法に比べて手間がかかる点が特徴です。

方法3:年間における月平均の所定労働日数を基準にする計算方法

年間における1ヶ月あたりの平均所定労働日数を分母として用いる計算方法です。
まず「年間の総所定労働日数÷12ヶ月」で月平均の所定労働日数を算出します。
その上で、「月給額÷月平均の所定労働日数×実際の出勤日数」という式で支給額を計算します。
この方法の利点は、一度月平均の所定労働日数を算出してしまえば、年間を通じて1日あたりの賃金単価が固定されるため、月ごとの変動がなく計算が簡便になる点です。
しかし、祝日が多い月など、実際の所定労働日数と月平均の日数が大きく乖離する場合があります。
そのため、実際の労働実態とのズレが生じる可能性がある点には留意が必要です。

社労士 小栗の
アドバイス

日割り計算の方法を3つのうちどれにするかは企業の自由ですが、全従業員に対して一貫した方法を採用し、就業規則や賃金規程に明確に記載することが必須です。方法1(暦日数基準)は計算が簡単ですが、月によって単価が変わり、従業員間で不公平感が出やすい側面があります。方法3(月平均所定労働日数基準)は単価が安定し計算も簡便なため、公平性と実務効率のバランスが取れた方法として推奨されることが多いです。ルールを決めたら、入社時に必ず従業員に説明しましょう。

月途中入社の給与計算で確認すべき4つの注意点

月途中入社の給与計算では、基本給の日割り計算以外にも、手当の扱いや社会保険料の控除など、確認すべき点がいくつかあります。
特に中途入社の場合、月給に含まれる手当の種類や社会保険料の仕組みについて、従業員が十分に理解していないケースも考えられます。
これらの項目を正しく処理しないと、給与の過払いや不足、さらには従業員とのトラブルにつながる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
ここでは、実務上特に重要となる4つの注意点について解説します。

注意点1:通勤手当や住宅手当などが日割りの対象か確認する

給与計算を行う際は、基本給だけでなく通勤手当や住宅手当といった各種手当が日割り計算の対象になるかを確認する必要があります。
どの手当を日割りにするかは企業の賃金規程によって定められています。
例えば通勤手当は、出勤日数に応じて実費を支払う場合もあれば、1ヶ月分の定期代を日割り計算して支給するケースもあります。
一方で、住宅手当や役職手当のように、従業員の属性や職務内容に対して支払われる手当は、月の労働日数に関わらず満額支給されることが一般的です。
手当の種類によって扱いが異なるため、一つひとつ自社の規程を確認し、どの手当が日割りの対象で、どの手当が満額支給なのかを正確に把握して計算することが重要です。

注意点2:社会保険料や雇用保険料は1ヶ月分が控除される

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、日割り計算されません。
月の途中の入社であっても、資格取得日(入社日)が属する月から1ヶ月分の保険料が発生します。
これは、月末時点で在籍している従業員に対して保険料が課される仕組みのためです。
例えば9月30日に入社した場合でも、9月分の社会保険料が満額かかります。
この入社月に発生した保険料は、原則として翌月の給与から控除されますが、企業によっては当月控除としている場合もあります。
一方、雇用保険料は、その月に支払われる賃金総額に保険料率を乗じて算出されるため、日割り計算後の給与額に基づいて計算された金額が控除されます。

社労士 小栗の
アドバイス

社会保険料は日割りがないため、入社月によっては日割り給与に対し、翌月控除の社会保険料が満額引かれ、手取り額が非常に少なくなることがあります。特に月末入社の場合、その月の給与が数日分なのに対し、翌月は2ヶ月分の社会保険料が引かれる(当月控除の場合は1ヶ月分)ことになり、トラブルの原因となりがちです。給与計算担当者は、入社時や初回の給与明細を渡す際に、社会保険料の控除の仕組みと金額を必ず事前に説明し、従業員の理解を得るように努めてください。

注意点3:日割り後の給与が最低賃金を下回らないか確認が必要

日割り計算を行った結果、その月の給与を労働時間で割った時間単価が、定められた最低賃金を下回らないかを確認しなくてはなりません。
最低賃金は時間額で定められており、月給制の従業員であってもこの基準は適用されます。
確認方法は、「日割り計算後の給与額÷月の総労働時間」で算出した時間額と、事業所の所在地がある都道府県の最低賃金額を比較します。
特に、月末近くに入社して出勤日数が数日しかない場合などは、最低賃金を下回る可能性が出てくるため注意が必要です。
万が一、最低賃金を下回っていた場合は違法となり、差額を支払う義務が生じるため、給与計算担当者は必ずこのチェックを行わなければなりません。

注意点4:どの計算方法かは会社の就業規則や賃金規程で決まる

これまで解説してきた給与の日割り計算の方法や手当の扱いについては、法律で一律に定められているわけではありません。
どの方法を採用し、どのように運用するかは、すべて各企業が定める就業規則や賃金規程に委ねられています。
したがって、給与計算担当者は、まず自社の規程内容を正確に把握することが最も重要です。
規程に沿って計算することで、従業員への説明責任を果たすことができ、無用なトラブルを回避することにもつながります。
もし規程に明確な記載がない場合は、後のトラブルを防ぐためにも、計算方法を明確に定めておくことが望ましいです。
従業員側も、入社時に給与に関する規程を確認しておくことで、安心して働くことができます。

社労士 小栗の
アドバイス

給与計算担当者は、日割り計算のロジックや控除対象となる手当、社会保険料の扱いについて、計算前に従業員へ書面や口頭で具体的に説明するためのマニュアルを整備しておくべきです。特に中途入社者に対しては、前職と給与計算の基準が異なることに戸惑うケースが多いため、「いつ」「いくら」控除され、その根拠が「就業規則のどの条項」に基づくのかを明確に伝えることで、後々の給与トラブルを大幅に減らすことができます。

まとめ

月途中の入社における給与計算は、日割りで行うのが一般的ですが、その計算方法は企業によって異なります。
主に「暦日数」「その月の所定労働日数」「月平均の所定労働日数」のいずれかを基準に計算されます。
また、基本給の日割りだけでなく、各種手当が日割りの対象となるか、社会保険料は日割りされず1ヶ月分が控除されること、計算後の給与が最低賃金を下回らないかなど、複数の注意点が存在します。
これらの扱いはすべて会社の就業規則や賃金規程によって定められているため、給与計算担当者はまず自社のルールを正確に理解することが不可欠です。
規定に沿って正しく処理し、従業員に計算根拠を説明できるようにしておくことが、円滑な労務管理につながります。

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